2011/10/01

ピレネー山脈

■コンポステラへの道
 キャンプ場を出発して、サン・ジャン・ピエー・ド・ポー(以下SJPP)へ向かいます。遠くにピレネー山脈がそびえ、なだらかな丘の合間を走ります。バックパックを背負って杖を突きながら歩く人や、ロードバイクを駆る人たちを横目に見やりながらしばらく走ると、ホタテ貝をモチーフにしたコンポステラのシンボルを発見! ボルドーからここまでも巡礼路のようでしたが、このマークを目にすると実感がわいてきます。

 SJPPはフランス側の巡礼路が集結する、ピレネー越えの拠点のだそうです。このほかのルートもあるようですが、それはまたの機会に譲ることにしましょう。出発から40Kmほどで丘の中腹に建設された街が見えてきます。SJPPに到着です。欧州に入ってから平地を走ってきたせいか、斜面に沿ってできた街並みは新鮮に感じられます。

 その昔はピレネー山脈に向かって開かれた「スペイン門」をくぐって山越えが始まったようです。ちなみに、フランスのパリからスペインのサンティアゴ・デ・コンポステーラまでの巡礼路は世界遺産に登録されています。道それ自体が世界遺産になっているのは珍しく、あとは日本の紀伊山地の参詣地くらいだそうです。



■旅人から巡礼者へ
 まずは巡礼路の情報を集めるために観光情報局を訪ねると、スタッフのみなさんが暖かく迎えてくれます。ピレネー越えのルートには徒歩ルートと車道があり、徒歩ルートは車はもちろんのことバイクも入ることはできないらしい(走るなんてとんでもない、というハードなルートだったようです)。バイクで日本から来たことを知ると質問攻めと写真撮影が始まり、「彼女はワシントンポストの人だ」と記者と思しき人を連れてくるなどいたく珍しがられたのでした。

 コンポステラまでのルートを聞くと、巡礼者手帳をくれました。キリスト教徒じゃなくても巡礼者になれるものなのですね。この手帳はスタンプ帳を兼ねているようで、「第一歩だ」といってSJPPのスタンプをどすんと押してくれます。お、なんだか道の駅スタンプラリーみたいだぞ。ジップロックをつけてくれる気遣いがとてもうれしい。SJPPでは中世スタイルの杖や帽子など巡礼者グッズのほか、最新のアウトドアグッズが売られていて売店をのぞいているだけでもなかなか楽しいものです。思う存分冷やかした後にピレネー越えに出発です。

■ピレネー越え
SJPPからスペイン側の拠点・パンプローナまでは約60Kmの道のりです。道の状態はかなり良く、バイクや自転車がかなり攻める走りをしていました。標高約1,050mの峠でも気温は15℃くらいと比較的暖かく、雪を気にしていたのが馬鹿らしくなるほどでした。山越え中とはいえ、10Kmおきに小さな村が点在しています。バーやレストラン、スーパーまであるので徒歩巡礼にはうれしいことでしょう。峠道を終えてパンプローナに近づくにつれて岩肌が目立つようになりました。フランス側は緑が多く、道も森の中を走っているかのようでした。さらにスペイン側は日差しがきつく、山脈を越えるだけでこれだけ違うものなのかと驚きます。

 パンプローナをパスして巡礼路を追うことにします。ホタテマークが指し示す方向を行くと、道の脇にぽつんと教会が建っています。寄ってみると、教会の門は閉まっていますが、その脇にある小屋(といっても石造りの立派なもの)の前にスタンプ台が置かれています。小屋の中は徒歩巡礼者のための休憩室を兼ねた情報所になっていました。さっと見学して走り出すと、道は小さな街の中に吸い込まれていきます。道を追っていくと、ツーリストインフォメーションを発見しますが、時は16時で書き入れ時のはずなのに閉まっていました。これがかの有名なシエスタか…!

■巡礼者手帳の効力
 こちらもそろそろ宿を探さないといけないので次の街に向かいます。寄り道しながら1時間ほど走り、エスティーリャに到着します。ツーリストインフォメーションでフリーマップをもらって、YHの場所を確認すると「あんたピグリムかい?」と聞かれます。ピクミンは架空の生物、ピオリムは素早さ向上だ。詳しく聞いてみると巡礼者のことをピグリムといい、巡礼者手帳を提示すれば特別料金でYHを利用できるらしい。YHに行ってみると、やはりピグリムか聞かれます。手帳を差し出すと1泊9ユーロ*と破格の値段になるのでした。巡礼者手帳をくれたSJPPのスタッフに感謝! 4人部屋をひとりで占有してゆっくり過ごすのでした。

*ピグリム価格にシーツ代は含まれていないので寝袋必須です。なぜか枕カバーだけはもらえます。

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